コロナ時代に起業家が考える3つのこと
2020年3月以降のコロナショックは、世界に暗い影を落としました。
コロナ時代と言われるようになった今、起業を考えるあなたは何が大事になるか考えたことはあるでしょうか。
起業やビジネスにおいて大事な心構えを挙げればキリがありませんが、コロナ時代の今だからこそ大事な3つのポイントをお伝えします。
お伝えするポイントは、これから起業するかただけでなく、既存のビジネスや事業の継続でもそのまま適用できる基本の考えかたです。
あなたのビジネスにどの程度重要であるか考えながら、最後までお読みいただければ幸いです。
コロナ時代の起業で大事な3つのポイント
未だ終息のめどが立たないコロナウイルスの感染拡大。
コロナ時代となった今、起業を考えるビジネスパーソンにとって3つのポイントが重要になるでしょう。
【コロナ時代の起業で考えるべき3つのポイント】
● 事業を継続するための「資金繰り」
● 「収入の分散」によるリスクヘッジ
● 時代の変化に合わせた「スキルの見直し」
コロナウイルスの感染拡大がはじまって以降、ビジネスに大きく影響する2つの言葉が叫ばれ続けています。
● 3密
● ソーシャルディスタンス
未だに密閉、密集、密接する場所を避け、第三者との物理的距離を保つようあちこちで呼びかけられている状況。しかし上記2つの言葉はお店から客足を遠のかせ、人とのコミュニケーションに弊害を及ぼしました。
起業するビジネスパーソンは、人と接触しない新たなビジネスモデルを構築しなければいけなくなったのです。また、国、自治体からの様々な給付金、補助金などのメニューがありますので利用出来るのは利用することをお薦めします。
ではコロナ時代の起業で考えるべき3つのポイントについて、具体的に何をどうすべきなのか考えてみましょう。
ポイント1【資金繰り】
コロナ時代における起業でもっとも重要になるのが、「資金繰り」です。
「資金調達」や「銀行融資のリスケ」「固定資産の売却」など、資金繰りは多角的に考えなければいけませんが、特に大事になるのが「手元流動性比率」。
手元流動性比率とは、1か月分の売り上げに対して現預金やすぐに換金できる有価証券がどの程度あるかを表す指標です。つまり「売り上げがゼロになったとき、支払いにまわせるお金が何か月分あるか」が分かります。
計算方法は簡単です。
【手元流動性比率】
(現金 + 預金 + 有価証券) ÷ 1か月分の売り上げ = 手元流動性比率(か月)
コロナ時代となった今、大手企業ですら破綻の危機に追い込まれるケースが珍しくありません。
コロナに限らず、あらゆるトラブルや起業後の収入が減ってしまった際の資金繰りを考えるうえで、手元流動性比率は常に意識しておくべき大事な指標なのです。
業種別の手元流動性比率
参考までに業種別の手元流動性比率を見てみましょう。
下表は中小企業庁の「令和元年 中小企業実態基本調査」を基に、「現預金÷1か月分の売り上げ」で算出した手元流動性比率です。
手元流動性比率 | |
---|---|
建設業 | 2.81 |
製造業 | 2.38 |
情報通信業 | 3.63 |
運輸業、郵便業 | 2.08 |
卸売業 | 1.47 |
小売業 | 1.19 |
不動産業、物品賃貸業 | 5.09 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 2.93 |
宿泊業、飲食サービス業 | 1.39 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 1.96 |
その他サービス業 | 2.85 |
もっとも手元流動性の低いのが、小売業と宿泊、飲食サービス業です。
食品スーパーなどにおいては売り上げを伸ばした企業もありましたが、アパレル業界では有名企業ですら破綻し、飲食店やホテルでも倒産が相次ぎました。
事実、帝国データバンクが公表した業種別のコロナ関連倒産件数は、「飲食」、「宿泊」、「小売り」が多くを占めています。
引用:帝国データバンク 「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査
2020年3月以降のコロナ禍では多くの企業や個人事業主が倒産に追い込まれ、一部メディアでは倒産した企業の半分が黒字倒産だと報じています。
黒字倒産とは、「帳簿上は黒字でも、支払いをできる現金が手元にない」という状況。つまり売り上げの入金が遅いため、手元資金での支払いができずに倒産してしまうのです。
起業後はある程度の会計知識や税務知識が身に付くため、誰しも資金繰りで頭を悩ませるときがきます。
もちろん、資金繰りにおいて手元流動性比率だけを見ていれば良いわけではありません。
ただ少なくともコロナのような緊急事態に見舞われたとき、自分の事業を継続できるかどうか数字で把握する癖はつけておいたほうが良いでしょう。
ポイント2【収入の分散】
資金繰りと同時に考えなければいけないのが「収入の分散」。
コロナだけに関わらず、起業後はさまざまなリスクと向き合わなければならないためです。
【起業におけるリスク】
● 収益が減少するリスク
● 固定費がかさむリスク
● 病気やケガで休業するリスク
etc……
固定費のリスクを排除するならコスト削減、病気やケガのリスクは保険でカバーできます。
しかし収益が減るリスクは、コロナだけでなく顧客ニーズの変化や他社との競合、社会的な経済不安といったさまざまな事柄が要因になります。
コロナ時代の今なら特に、収入を一つの事業や業種に依存した起業はリスキーと言えるでしょう。
一つの収入に依存するリスク
事実、コロナウイルスの感染拡大により大きな影響を受けたのが、「フリーランス」という形態で起業した個人事業主です。
クラウドソーシングサービスを提供する「クラウドワークス」は、1400人のフリーランスに対して新型コロナウイルス感染拡大による影響を調査。
フリーランスの約半数が、「仕事が減った」「ほかの仕事での収入確保を検討している」と答えています。
引用:クラウドワークス
たった一つのアイデアやスキルを基に起業する事例は多く目にしますが、一方でメインの事業が失敗して即退場となるケースも珍しくありません。
とりわけコロナ時代となった今、事業が立ち行かなくなったときを想定して副収入を確保しておくべきでしょう。
今やサラリーマンですら「本業+副業」が当たり前となりました。
メイン事業とは別の収入を確保することは、コロナ時代で確実に事業を継続するための大事なリスクヘッジなのです。
ポイント3【スキルの見直し】
そしてコロナ時代にあらためて考えていただきたいのが、「自分のスキル」です。
スキルと言ってもさまざまですが、コロナ時代だからこそ特に大事になるのが「ITスキル」。
テレワークの推進を発端に多くの企業がIT化を進めるなか、起業後の業務が紙ベースでは非合理でしかありません。
事実、会社命令でテレワークや在宅勤務を余儀なくされ、はじめてのオンラインツールの使いかたで苦慮した人は多くいました。
ソフトウェアを開発するアドビ株式会社が調査したところでは、40代以降の4人に1人は「ITツールの使いかたを相談できる人がいない」と回答したほどです。
引用:アドビ株式会社 ビジネスパーソンのテレワークスキルに関する調査結果
コロナによるテレワークの実施は、これからの時代におけるITスキルの重要性を浮き彫りにしたと言えます。
もちろん、ITスキルが高いだけでコロナ時代の起業が成功するわけではありません。
同時に高めておきたいのが、「コミュニケーションスキル」や「自己管理能力」といった重要スキルです。
コロナ時代に必要な3つのスキル
アドビ社では、コロナウイルスの蔓延による騒ぎが起こる直前に「テレワーク中の心理的・身体的課題」も調査しています。
結果、多くの人がコミュニケーションや時間管理、業務遂行に関して不安に思っていることが分かりました。
引用:アドビ株式会社 テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果
つまり自分一人で業務をこなすことになった際、多くの人が他者とのコミュニケーションや自己管理において不安を感じるのです。
起業家も孤独であるという点で同じであり、自分ですべての業務をこなさなければいけません。
コロナ時代の起業において「ITスキル」や「コミュニケーション能力」、そして「自己管理能力」はビジネスにおける重要スキルです。
ITスキルとはいっても、プログラミングやアプリ開発といった高度なスキルではありません。
少なくともオンラインツールやタスク管理ツール、ExcelやPowerPointといった基本的なアプリケーションを使えるスキルは必須であると考えたほうが良いでしょう。
コロナ時代に起業するための心構え
ここまで、コロナ時代に起業家が考えておきたい3つのポイントについて解説させていただきました。
世の中には多くの事業やサービスがあり、消費者ニーズも十人十色です。特に昨今は時流の変化が激しくなり、ちょっとしたことでビジネスモデルや経営戦略を変更せざるを得ないケースも多くなりました。
たとえば生き残りや人材確保をかけた異業種参入。
富士フイルムの化粧品や医療への参入、ベネッセコーポレーションの介護事業への参入などが良い例でしょう。
今回解説させていただいたポイントを基にした注意点として、コロナ時代の起業における心構えを考えてみましょう。
【コロナ時代の起業における注意点】
- ●支払いに回せる自己資金が常にある状態を心がける
- ●会計や税務など事業を数字で把握する癖をつける
- ●長期的な視点でロードマップを考え、あらゆるリスクを想定する
- ●事業が上手くいかないときに備えて副収入を確保する
- ●時代の変化に合わせてビジネスで必要なスキルを身に付ける
上記はすべてビジネスにおいて大事な注意点ですが、コロナ時代になった今となれば特に重要なファクターになります。
一つの物事や事象に固執するのではなく、常に広い視点で柔軟に立ち回る姿勢を維持することが、アフターコロナで求められる起業家としての心構えとなるでしょう。
執筆者情報
■株式会社アントレサポート 鈴木■
創立23年のレンタルオフィスの会社を経営。 |
執筆日:2020年10月13日