外国企業の日本進出について
外国の方が日本で事業を行う場合、経営管理ビザ、企業内転勤ビザを取得してビジネスを行うケースが多いと思います。
先日、外国企業から日本に拠点を作りたいと言う話を頂きました。
業務内容は日本での各種リサーチ業務を主に考えており、営業活動などは行わないそうです。実際に日本でのリサーチを行う日本人の正社員を雇用するそうで、社会保険など完備する予定のようです。
外国企業のお客様自身も経営管理ビザを取得して支店を作るか、企業内転勤で駐在員事務所を作るか調べていて、日本で法人を設立する場合、代表者が経営管理ビザを取得する必要があると考えていました。
しかし、2015年3月の法改正により、発起人、代表取締役及び取締役のいずれも、日本住所を有していない場合でも日本法人設立が可能となりました。
よって、現在、外国企業が日本で法人を設立する場合、経営管理ビザを取得した代表者を日本に置かずに外国資本で法人を設立することができるのです。
その場合、役員の登記の本人確認書類として、その国の印鑑証書に値するサイン証明書や宣誓供述書などが必要となります。
では、出資金の払い込みを受ける銀行口座をどうするのでしょうか?
その国の銀行の日本支店で口座を作る、又は、その国に進出している日本の銀行で口座を作るという方法があります。あるいは、日本に協力者がいる場合、株を1%でも所有して発起人としてなってもらい、その協力者の口座を使う方法もあります。法人設立後は1%の株を買い戻すことができます。いろいろと方法はございますので、詳しくはご相談ください。
前記した外国企業のお客様は、営業活動を行わないので、企業内転勤ビザを取得し、駐在員事務所の開設を行うことになりました。
日本法人、支店、駐在員事務所と日本進出を行った場合、様々な制限を受けます。詳しくは以下の表でご確認ください。
外国企業の日本進出形態について
日本法人登記 | 日本支店登記 | 駐在員事務所 | |
---|---|---|---|
登記の有無 | 必要 | 必要 | 不要 |
営業活動の有無 | できる | できる | できない |
事業体について | 日本法人 | 外国法人と同一事業体 | 法的な事業体として見られない |
法人銀行口座開設 | できる | できる | できない |
確定申告 | 必要 | 必要 | 不要 |
社員の雇用 | できる | できる | できる |
労災保険 | 加入義務有り | 加入義務有り | 加入義務有り |
雇用保険 | 加入義務有り | 加入義務有り | 加入義務有り |
社会保険 | 加入義務有り | 加入義務有り | 任意適用事業者として適用 |
ビザ取得 | 経営管理ビザ | 企業内転勤ビザ 又は経営管理ビザ |
企業内転勤ビザ |
オフィス賃貸借契約 | できる | できる | できない (代表者個人に帰属する) |
今回の外国企業のケース
今回の外国企業の要望は2つ。1つは、日本人の正社員を雇用する(既に採用予定の人材が決定しており、採用条件のひとつが社会保険の完備)、もう1つは、日本で銀行口座を開設することでした。
では、駐在員事務所の場合はどうでしょうか?
駐在員事務所でも日本人正社員の雇用はできます。
また、ハローワーク管轄の労災保険、雇用保険は強制適用となります。
しかし、年金事務所管轄の社会保険については、任意適用事業所として適用され、直ぐには適用されません。オフィスの賃貸契約書写しなどの提出や駐在員事務所としての活動を確認後の適用となり、申請から3か月後位の適用となるそうです。
また、住民税も社員2名までは普通徴収で済みますので、法人が納める特別徴収にする必要はありません。
日本の銀行での口座開設については、駐在員事務所では現状難しいようです。基本、銀行は法人の場合、日本に登記していることが最低条件になるそうです。
よって、日本に登記の無い駐在員事務所では、法人口座の開設は難しいということになります。
特に近年、法人口座開設は審査が厳しくなっており、専用オフィスが無いと口座開設は難しくなってきています。本国の銀行の日本支店などで口座を開設するなど方法を考える必要があります。当社でもご協力させて頂きますのでご相談ください。